秋の気配

日付も変わる時刻。スズムシの声を聞きながら、鼓動はしっとりと落ち着いていきます。心に言葉が戻ってきたようです。ある時、ふと言葉を失いました。心が言葉を発しないんです。突然居なくなって、文章を起こす気が起きない。心の喜びの起伏が無くなって、平坦な道を歩いているようでした。かと言って、不都合なことなどもなく、それはそれで穏やかでいいものでした。

今夜は、久しぶりにゆっくりと、お店でぼんやりしていました。解決しなくてはいけないことを放り出して、ただただ、光に集まる窓の虫を眺めていました。そして家に帰る時に、美しい月を立ち止まって眺めました。その月を思い出しながら、お風呂でゆっくり過ごしました。その時、時間の経過は美しいなと思ったのです。どんな流れであろうとも、形に残せたことは素晴らしいんだなと。そこに辿り着くことを、願っていたのでしょうか。よく判りませんが、納得のいく答えをようやく見つけたのか、心が解れるようでした。期待するような流れではなくとも、それはそれで一つの答えであると納得できたなら、次は自然と前に進むことができます。さて、朝になったら、花を一輪見つけに行こうかな。

夏の日の、水俣の朝。優しい想い出。

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