久しぶりに自転車に乗ってみた。
卒業する娘の自転車。学校まで5キロちょっとを、3年間行き来したツワモノ。そもそも夫が中学生の頃に乗っていた自転車で、20年以上経つが、まだまだ軽快に走る。
夕暮れ時で、空から青がひき、代わりに黒が降りてくるそんな時間。
そんな視界がぼやける中、どんどん飛び込んでくるのは、たくさんの香り。
どこかの夕餉の香り、咲き乱れる水仙の香り、姿は見えなくともはっきり現れる桃の花の香り。
いつもお店に家に篭っていて、ちっとも気づかなかった香り。
どうして忘れていたんだろう。
こんなにステキなことを。
どんな季節の移り変わりも、全てが新しく、全てが初めてで、子供の頃はいつもクンクンしていたのに。
ぎゅっと子供の頃の感覚が蘇る。
ところが大人になったワタシは、その感覚をどうすれば良いのか、とポカンとしてしまった。
心地いい感覚。
なのに、戸惑いもする感覚。
ポカンとしながら、
いつのまにか、
またクンクンと何かを嗅いでいた。
ローズマリーの花は、優しく穏やかな香り。